細菌学

【牛の呼吸器感染症】①牛肺疫

牛肺疫

・牛肺疫は、牛の胸膜肋膜肺炎を主徴とした急性致死性疾患。

法定伝染病海外伝染病に指定。

宿主

・主な宿主は水牛

  • 本菌は鹿、めん羊、山羊などにも感染するが、これらに対する病原性は低く、感染期間も短い。
  • 法定伝染病に指定されている動物種については太文字オレンジ線で表記。

病原

・病原体となるのは、Mycoplasma mycoides subsp. mycoides

菌体表面に莢膜を形成し、その主成分であるガラクタンが毒性因子。

→肺牛疫に特徴的な大理石紋様は、ガラクタンによる肺小葉間結合組織(間質)の水腫性拡張が小葉実質を取り囲んだ形態。

分布・疫学

・アフリカ、アジア、中南米、南欧 など。

→特に西・中央アフリカ諸国での発生が顕著。

日本では過去に3回発生したが、徹底した摘発と淘汰によって撲滅。

・主な感染経路は、感染牛との接触感染飛沫吸入による気道感染

→感染牛の鼻汁や気管粘膜には多量の病原体が含まれ、発咳によって飛沫となるため、集団における伝染力は極めて高い。

→特異な感染経路は、菌が付着した乾牧草から経口感染。

・致死率は5~80%。

→牛の月齢で大きく異なり、若齢牛ほど高い。

→3歳以上でほとんどが耐過して保菌牛となり、感染源となる。

本病の伝播、感染、発病には季節要因や特別な発病要因は存在しない。

診断

症状

  1. 潜伏期:2~8週間
  2. 初期症状:発熱、食欲不振
  3. 病勢が進むと、高熱、疼痛性の強い発咳、鼻汁漏出、呼吸困難、食欲と反芻の廃絶(乳牛:泌乳も停止)
  4. さらに病勢が進むと、起立不能となり、最終的に死亡。

・慢性例では軽度の発咳が見られる程度だが、関節炎を併発することも。

病理

胸膜肋膜肺炎の所見。

→肺割面は大理石紋様の所見を呈し、胸腔内には多量の胸水貯留。

・耐過牛

→肺と肋膜、肺と胸膜の癒着が顕著。

→肺炎部は多形核白血球、単球、リンパ球の高度の浸潤が必発し、出血性像が認められることも。

病原診断・血清診断

・病原診断

→蛍光抗体法

→PCR-RELP(PCR産物の制限酵素切断パターン)(最も速く、確実)

→分離培養(培養後2~3日でコロニーが確認できる)

・血清診断

→CF反応(OIEでは簡便性の優る競合ELISAを推奨)

山羊と牛が同居する農場では、牛にM.mycoides subps. capriが不顕性感染することでCF反応が陽性になる場合があるため注意。

予防・治療

・日本をはじめとする清浄国では、動物検疫の徹底(国内の侵入防止)が大原則。

・発生があった場合は「家畜伝染病予防法」に基づいた摘発と淘汰を行うため、治療は行わない

マイコプラズマの簡単な復習

通常、マイコプラズマは日和見的に感染するが、牛肺疫は例外!!

・細胞壁を欠く

・無細胞培地で発育することができる最小の微生物

・菌形は多形性であり、球状や球桿状を示すことが多いが、その他にもフィラメント状などを示す

「越境性動物疾病」とは?

牛肺疫は「越境性動物疾病」の代表例。

・伝播力が強いため、一度蔓延すると…

①長期に渡って畜産業の生産性を低下させる

②国民への畜産物の安定供給を脅かす

③地域社会や地域経済に深刻な打撃を与える

④国際的に清浄国としての信用を失う恐れがある

→上記のリスクを考え、牛肺疫は「特定家畜伝染病」に指定されている

特定家畜伝染病指針とは?

・「特定家畜伝染病指針」とは、家畜の伝染性疾病の発生予防や蔓延防止について、国がその対応方針を都道府県に通知するための指針。

特に総合的な発生予防および蔓延防止のための措置を講ずる必要がある家畜伝染病に関して、国、地方公共団体、関係機関などが連携して取り組むための発生防止および蔓延防止などの措置を講ずるための指針を作成。

→対象:口蹄疫BSE鳥インフルエンザ豚熱牛疫アフリカ豚熱牛肺疫 など

参考資料

・動物の感染症〈第四版〉

・管理人のまとめノート

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