細菌学

【牛の消化器感染症】③子牛の大腸菌性下痢

子牛の大腸菌性下痢

・子牛の大腸菌性下痢は、主に下痢原性大腸菌(ETEC,STEC など)による下痢を主徴とする子牛の腸管感染症。

宿主

・宿主は、子牛または牛。

病原

・病原体となるのは、下痢原性大腸菌(diarrheagenic Escherichia coli

→発症機序によって5つに分類。

  1. 腸管病原性大腸菌(EPEC)
  2. 腸管侵入性大腸菌(EIEC)
  3. 腸管毒素原性大腸菌(ETEC)
  4. 腸管出血性大腸菌(EHEC) / 志賀毒素産生性大腸菌(STEC)
  5. 腸管凝集付着性大腸菌(EAggEC)

→主に子牛の大腸菌性下痢で問題となるのは、ETECSTEC

腸管毒素原性大腸菌(ETEC)

・毒素:プラスミド(接合伝達性プラスミド)

易熱性毒素(LT:AC活性化)《A-B毒素》

耐熱性毒素(ST:GC活性化)《リガンド様毒素》

・易熱性毒素(LT)

→A-B毒素(A1B5)

→60℃/10分で失活

→生物活性や発現機序、ウサギの腸管内に体液を貯留するなど、ファージ支配のコレラ毒素と類似

  1. 小腸上皮細胞表面のレセプター(GM1ガングリオシド)にLTが結合
  2. 毒素が細胞内に侵入し、ACを活性化
  3. 細胞内cAMPが増加(水と電解質の能動輸送↑)
  4. 水が過剰分泌され、下痢を起こす

・耐熱性毒素(ST)

→リガンド様毒素

→100℃/30分に抵抗性

  1. 小腸上皮細胞表面のレセプター(GC)にSTが結合
    • STⅠ:乳のみマウスに接種
    • STⅡ:幼若な豚に接種
  2. 腸管上皮のGCが活性化
  3. 細胞内cGMPが増加(Clイオンの細胞外への放出↑)
  4. 浸透圧に伴い水溶液の分泌量が増え、下痢を起こす

志賀毒素産生性大腸菌(STEC)

・溶原ファージによってコードされる。

→Stx1:志賀毒素と同一構造

→Stx2:Stx1と55%相同

・A1B5毒素や酵素毒素に属し、蛋白質の合成を阻害。

・A/E病変が見られる(インチミンが産生される)

・ヒト:出血性大腸炎

→溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症を起こす

→O157、O26、O111で多く見られる

分布・疫学

・確定診断は少なく、その実態は不明。

・主な感染経路は、感染個体から排泄された便などを介する、環境からの経口感染

診断

症状

・ETEC

→灰白色~黄白色の軟便~水様性便

→体内の水分と電解質の喪失に伴う、脱水とアシドーシスの進行

→皮膚の弾性喪失、眼球陥没、倦怠感、哺乳欲廃絶 など

・STEC

→症状は不顕性から重篤なものまで様々

 ⇒発熱、食欲低下、軟便または粘液便、水様性下痢、慢性的な軽度の脱水、重篤な出血性下痢、死亡 など

・子牛の赤痢

→潜血または凝固血液を含む、悪臭のある下痢便または黒緑色粘液様便

→脱水症状、哺乳欲廃絶、体重減少 など

病理

・ETEC

→肉眼所見:小腸から大腸にかけて水様性内容物が出現

→組織学的所見:小腸絨毛の粘膜上皮細胞の刷子縁上に多数の小桿菌塊が付着

絨毛の萎縮、粘膜上皮細胞の変性や壊死などは見られない。

・STEC

→肉眼所見:大腸に泥状~粘液状、または血様内容物が出現

→組織学的所見:腸粘膜にA/E病変が見られ、重篤な場合は出血性大腸炎を発症

菌体表面のBFPやインチミンを介して腸管上皮細胞に強く接着するため、微絨毛は破壊される。

病原診断・血清診断

・病原診断

→増菌培地や選択培地での分離培養を行い、付着因子や毒素を検出。

・子牛の大腸菌性下痢を疑う大まかな基準

→小腸内容物:10⁶個/g<

→大腸内容物および糞便:10⁸個/g<

・血清診断

→実用化されているものはない

予防・治療

・予防

→環境や個体などの衛生管理の徹底

→ワクチンの接種(ETECのみ/STECは×

・治療

→輸液、抗生物質の経口投与 など

参考資料

・動物の感染症〈第四版〉

・管理人のまとめノート

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