細菌学

【牛の消化器感染症】②牛のサルモネラ症

牛のサルモネラ症

・サルモネラ症は、経口的に摂取された病原体が腸管内で増殖することで下痢症を起こす。

・病原体が腸管粘膜から体内に侵入すると全身症状が見られることがある。

・牛のサルモネラ症を起こす「Salmonella Dublin」は届出伝染病に指定。

・サルモネラ症そのものは人獣共通感染症に指定。

宿主

・サルモネラ症の主な宿主は哺乳類から魚類まで多岐にわたる。

からはS. Dublinが分離されることが多い。

  • 届出伝染病に指定されている動物種については太文字水色線で表記。

病原

・主な病原体となるのは、S. Dublin

  • サルモネラ症には様々な血清型が存在する。
  • S. Gallinarum
  • S. Abortusequi , S. Typhimurium , S. Enteritidis , S. Choleraesuis , S. Dublin

分布・疫学

・日本では主に3つの血清型が見られていたが、血清型の多様化によって多剤耐性菌であるS. Typhimurium DT104が分離される成牛(乳牛)が増加。

S.Typhimuriumの単相変異も届出伝染病に指定。

・サルモネラの農場への侵入ルート

→保菌牛の導入、鳥類を含む野生動物による持ち込み、汚染飼料を介した感染。

・感染ルート

→主に経口感染(その他:呼吸器感染、粘膜感染)。

→胃を通過して小腸に到達した病原体がそこで増殖し、下痢を起こす。

→下痢便に含まれる大量の菌が環境を汚染し、他個体への感染源に。

診断

症状

・子牛(6ヶ月齢以下)

→1~4週齢

 ⇒激しい症状が見られ、致死率は高い。

 ⇒高熱、食欲不振、悪臭黄色下痢便、粘血便、脱水、肺炎

→急性例:敗血症

→慢性例:関節の腫脹、神経症状

→回復例:保菌牛となり、間欠的に菌を排菌するため感染源に。

・成牛

S.Typhimuriumの場合

 ⇒発熱、食欲不振、下痢、起立不能、泌乳量低下

S.Dublinの場合

 ⇒発熱、食欲不振、下痢、起立不能、泌乳量低下、流産

病理

・下痢が見られる症例

→腸間膜リンパ節がうっ血、腫大し、小腸の菲薄化や充出血が認められる。

→腸内容物は悪臭のある黄白色~褐色の水様~泥状であり、カタル性偽膜性腸炎を示す。

→脾腫、黄疸、肺炎などを伴うことがあり、肝臓に小壊死巣(チフス様結節)が認められることがある。

 ⇒チフス様結節:巣状壊死と多数のマクロファージが認められる。

・肺炎を伴う症例

→肺の限局性肝変化が認められるが、急性敗血症例では特徴的な所見に欠ける。

病原診断・血清診断

・病原診断

→死亡個体の主要臓器、血液、腸内容物、発症個体の糞便 など。

→必要に応じて悪露、流産胎子、環境材料 など。

  • 選択培地DHL寒天培地MLCB寒天培地
  • 増菌培地ハーナ・テトラチオン酸塩培地ラパポート培地

→サルモネラ様コロニーが分離された場合

 ⇒TSI寒天培地とLIM寒天培地で生化学的性状を確認。

・血清診断

→菌体表面のリポ多糖体(LPS)抗原を用いたELISAによって、郡単位での汚染状況を把握。

→O抗原とH抗原を用いた凝集反応。

・遺伝子診断

→PCR

予防・治療

・予防

→導入時に隔離飼育と糞便調査

→野生動物の侵入防止やネズミの駆除

→定期的な畜舎内外の清掃や消毒

2価ワクチンの接種(S.Typhimurium , S.Dublin)

2価値ワクチンは発症を予防することはできるが、感染を予防することはできない

・治療

→同居牛の糞便調査を行い、保菌牛の隔離と抗菌薬治療。

牛由来のサルモネラは多剤耐性を示す場合が多いため、分離菌の薬剤感受性試験を行い、感受性薬剤を使用する。

→下痢による脱水症状の激しい牛では、対症療法(リンゲル液の注射、経口輸液剤の投与 など)を行う。

参考資料

・動物の感染症〈第四版〉

・管理人のまとめノート

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